ジブリ映画『君たちはどう生きるか』に登場する愛らしい白い生き物・わらわらは、劇中ではそれほど多くの出番がないにも関わらず、多くの人の心を掴む存在となりました。
モデルでタレントの滝沢カレンさんが声優を担当したのも大きな話題になりましたね。
今回は、そんなわらわらの正体や名前の意味、また、他のジブリ作品との類似点についてまとめています。
君たちはどう生きるかのわらわらの正体を考察!

出典元:スタジオジブリ
小さくて白い、ふわふわと浮かぶように動くわらわらは、一見すると可愛らしいマスコットのようにも見えますが、物語の中では重要な役割を担っており、その正体にはジブリらしい深い意味が隠されていると考察されています。
それでは、わらわらの正体について始めます。
わらわらの正体:これから人間として生まれる魂の源
わらわらの正体は、これから人間として生まれる魂の源です。
劇中、キリコによって明かされていました。
つまり、わらわらはまだこの世に生まれていない赤ちゃんの魂ということになります。
下の世界の海に囲まれた島で生活していて、成熟すると体を膨らませて空へ飛び立ち、上の世界へ行って人間の新たな命として誕生するという設定です。
わらわらが飛ぶためには、魚の内臓(ハラワタ)の栄養が必要とされており、これを食べることで成長して飛べるようになります。
また、彼らには天敵としてペリカンが存在し、全てのわらわらが無事に人間として生まれ変われるわけではないという残酷な一面も描かれていました。
このように、選別があることは、現実世界における生命誕生の偶然性や神秘を表現していると考えられます。
生命の循環とDNAの比喩
わらわらがハラワタを食べて成長し、一部はペリカンに食べられるという食物連鎖の描写は、自然界における生命の循環を表現しています。
また、わらわらが空に舞い上がる際に描く美しい螺旋は、私たちの体の設計図であるDNAの二重らせん構造を思わせる視覚的な比喩となっています。
わらわらが常に集団で移動し、上の世界へ旅立って新しい命として生まれ変わるという設定は、世代を超えて受け継がれる遺伝情報のように、命のバトンが受け渡されていく様子を象徴しているのではないでしょうか。
これらの表現を通して、すべての生命が繋がり循環するという壮大な自然の摂理を、愛らしいキャラクターを通じて伝えているのかもしれません。
わらわらの名前の意味を考察

出典元:スタジオジブリ
わらわらという名称も、とても興味深いポイントです。
これは日本語のオノマトペ(擬音語)であり、たくさんのものが一斉に集まったり動くさまを表現する言葉です。
たとえば「人がわらわらと集まる」などの使い方があります。
この言葉を名前に使うことで、命が集まり、動き出し、次第に形になっていく様子を視覚的・聴覚的に想起させる効果があります。
まるで無数の命が世界に降りてくる準備をしているような、にぎやかでエネルギーに満ちた存在感が、わらわらというネーミングから伝わってきますね。
わらわらと他のジブリ作品との類似点
わらわらは、過去のジブリ作品に登場する以下のようなキャラクターとも共通点があります。
- 『もののけ姫』のコダマ:森の精霊として描かれる白い小さな存在
- 『となりのトトロ』のまっくろくろすけ:子どもたちにしか見えない不思議な小さな生命体
- 『千と千尋の神隠し』のススワタリ:異世界のボイラー室に住む小さな住人
これらのキャラクターと同様に、わらわらもまた“目には見えないけれど確かに存在するもの”の象徴であり、宮﨑駿監督が大切にしてきた「見えない世界を信じる心」を形にした存在だと言えるのではないでしょうか。
まとめ
今回は『君たちはどう生きるか』に登場するわらわらの正体や名前の意味、また、他のジブリ作品との類似点についてまとめました。
わらわらの正体は、これから人間として生まれる魂の源です。
わらわらの存在を通して「人間も地球に住む生物の一種に過ぎず、いつか死ねば次の生命の源になる」という「人間は自然の一部」というメッセージを込めていると考えられます。
命の連鎖と循環という壮大なテーマを、愛らしいキャラクターを通じて表現することで、観客に生命の尊さや自然との共生を考えさせる狙いがあるのかもしれません。
わらわらの姿や行動は単純ながらも深い意味を含んでおり、『君たちはどう生きるか』という作品のテーマとも深く結びついています。
名前の由来もオノマトペとして意味深く、過去のジブリ作品に登場する精霊的存在との共通点も見られます。
わらわらを通して、生命の神秘や自然の摂理、見えない世界の存在を改めて私たちに伝えようとしているのかもしれません。
短い登場シーンながらも心に残るわらわらというキャラクターには『君たちはどう生きるか』という作品全体を貫くテーマが凝縮しているかのようにも思えます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。